「ドラゴンボール」というコンテンツを知らない人は居ないだろう。
アラサー、アラフォーのおじさんたちの青春時代を共にしたことはもちろん、今でも幼児や小学生のガキンチョの男心を擽る絵作品としては名高い。
僕が知らないような細かい設定や画面描写も、僕より年下の若い陣が熱く語る姿を目の当たりにすると、少し小恥ずかしくなる。
というのも、お恥ずかしい話、僕が原作のドラゴンボールを鑑賞し終えたのは大学生の頃。
時効だから言ってしまうが、夜勤という起きていたらお金が入るアルバイトをしている最中にアニメを見切った。
悟空の修行が長すぎて本当にドラゴンボールのいつメンが死んでしまうんじゃないかと思ってしまった「フリーザ編」。
人と機械。「いのち」の重さに踏み込んだ「セル編」。
全てにおいてスケールがメチャクチャな「魔人ブウ編」。
眠い目を擦りながら、夜勤のお供に見ていた時代が懐かしい。ドラゴンボールを鑑賞していた時期も時期だったため、
「超サイヤ人かっけー!!」
という中2心ではなく、
「怒りのエネルギーを力に変えることでパワーアップするのか。」
という、極端に冷めた目線で見ていた。
今回も例の如く、年下のドラゴンボールオタクに薦められた映画を冷静なおじさんの眼差しで何本か見ていた。
そのうちの一つが僕の心に残ったため、感想を語りたいと思う。
世の中には、ご主人さまの機嫌取りに精神的なエネルギーを使っている人が少なくない。
会社の上司、ご両親、ご兄弟。
形は様々かもしれないが、その暴君の気持ちをマネジメントすることで自分の幸せを守る事ができる。
ご主人様の機嫌を取っていれば、その怒りの矛先を自分に向けられる確率は減る。
そんなことを彷彿とさせるパワーバランスの設定である。
「機嫌次第で地球が木っ端微塵にされる」
そんなチートを使えるキャラクターが、破壊神・ビルスである。
案の定、彼が地球にやってきて地球を破壊しようとする。
その事実と驚異を知っているのは、忖度とか謙譲とは無縁のプライドの塊ベジータである。
ベジータだけが破壊神・ビルスを見たことがあり、その絶対的な力を過去に見たことがあったのだ。
そのプライドと自尊心が高すぎる男がとった行動に、僕は注目した。
結論を言うと、ベジータは己のプライドを2回捨てた。
破壊神・ビルスが地球に降臨、初めて機嫌が悪くなる時があった。
唯一ベジータだけが、破壊神ビルスに忖度をした。
ビルスの機嫌をはぐらかすために、キャラに似つかわしくないおちゃらけた芸を破壊神の前で披露する。
絶対に譲らなかった誇り高きプライドを、秒で捨てたのである。
そしてビルスが嫁のブルマをぶった時に、もう一度自分のプライドを捨てた。
捨てたんじゃなくて、隠していた妻への愛情がわかりやすく表へ出た。
どちらのせよ、結果的にベジータは他者に忖度することと、妻への感情を表面化するという行為で自分自身のプライドを捨てた。
プライドは捨てられても、自分が大切にしている二度ともとには戻らないかけがえのないモノは捨てられなかったのだ。どうしても。
結局、愛の力でいつも以上の力を得た超サイヤ人のベジータでさえ、破壊の限りを尽くす「破壊神」には刃が立たなかった。
物語の展開として、悟空がもういっちょパワーアップしてビルスと相見えるのであるが、その際に御供が抱えた2つの思いに深い共感を得た。
戦闘の最中、悟空に対して破壊神が面白そうに問う。
😼(ビルス)「どうした?不満そうだな。」
🙎♂️(悟空)「オラ一人じゃ来れなかった世界だ。ああ、不満だ。」
😼(ビルス)「面白いことを言うやつだ。仲間とともにゴッド(パワーアップしたこと)が気に入らないか。」
🙎♂️(悟空)「嬉しいさ。嬉しいけど、みんなの力借りなきゃビルス様とこうやって戦えなかったんだ。悔しいんだ。」
このシーンで悟空は2つの感情のせめぎあいを自分の中で感じることになる。
僕はここで胸にグッと来るものがあった。
・自分ひとりの鍛錬でレベルアップできず、仲間の力に頼ってしまった自分の無力さに対して怒る気持ち。
・仲間の力を借りることで自分がレベルアップし、やりたいことと仲間の期待に答えられることに対して喜ぶ気持ち。
表裏一体の感情ではあるが、自責や他責・GiveとTakeの概念を端的ではあるが感じ取れるシーンである。
結果的に仲間の期待に答えられるとしても、どうしても仲間のリソースを借りてしまうことは、客観的に見てTakeになってしまう。
できれば他人に迷惑をかけずに、自分のリソースの範疇で問題を解決したい。
そんな思いがすごく伝わった。
悟空は格闘することで、この境地にたどり着いたのかもしれないが、現実を生きる僕たちは、格闘よりも仕事をするシーンのほうが多い。
チームや仲間のために力を借りるときは大切であるが、できるだけ自分でできることを最大限尽くした上で、相談なり頼むなりしたいなと思った次第である。
明日も更新するから、待っててちょ。
Adios.