人手不足が騒がれる今日の日本において、人材市場は有効求人倍率が1.62倍という数字を示した。
リーマン・ショックの影響をもろに受けた2009年の数字は0.45倍であることから、市場が盛んなことは間違いないと言えるだろう。
転職の考え方については喧々囂々の議論が繰り広げられている今日において、僕の中で新たなトピックが舞い込んだ。
プライベートの先輩が転職したいと相談してきた。
この時流に乗って、新たな挑戦を試みる姿勢はとてもいいことである。
それと先輩もいい歳であるために、その大きな決断が自分の人生を大きく揺るがすことを悟っている。
転職希望の先輩の相談を受けた感想を語る。
まず、相談者である先輩のスペック。
僕と同じ大学を出ている先輩で、金融畑の人。
地方の金融機関で勤め人をしており、法人の新規開拓をするソルジャーであると仰っていた。
年齢はアラサーで、愛するガールフレンドとの婚約を1年後に控えている。
営業マンの信頼の担保として、左薬指に銀色の光沢をまとった指輪をはめることになるのだろう。
いかにも金融マンらしい人生の引き方だなあと感じた。
人柄は保守的で、地元が割と好きな人。
着々と金融機関の勤め人の駒を進め、支店長の名札も手に入れらるそうだ。
そんな先輩は実家暮らしで、僕も幾度か遊びに行ったことがある。
田んぼに囲まれた田舎で、実家が大好きだと自ら自負していた。
僕の実家とは異なり、めちゃくちゃ立派な木造の一軒家である。
床がピカピカであることは言うまでもなく、梁の太さや木の色味が魅せる建物の奥ゆかしさが、今まで住んできた人たちの人たちの人柄を物語るようだった。
金融機関あるあるの資格取得にも取りこぼしがないように、ちまちまと勉強をしては休日を地元の人や仕事の同期と楽しむ、絵に描いたような地方に戻った文系大学生のその後を体現していた。
田舎に就職することを散々ディスってきた僕であるが、このように家の事情や、ライフプランがしっかり立ててある場合は田舎に就職することも悪くないと思う。
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そんな人生の目標やキャリアの展開も決めきったように見えた先輩が、ある日突然の相談を持ちかける。
「俺、転職しようと思ってるんだ。」
こんな田舎の実家大好きで、そのライフプランを立てて突き進んできた先輩が、久しく連絡をとっていない僕にわざわざメールを送ってきた。
新しい挑戦をすることはすごく同意するし、地方金融機関は正直何の魅力も感じない職種だと個人的には考える。
長いスパンを考えて、転職することはありだとはっきり伝えた。
その上で先輩の話を聞くと、なんとベンチャー企業の人事に説明を受け、今月には営業担当とお話(実質面談)の予定が詰まっているという。
ただの相談だけでなく、実際に行動している点はとても評価に値するし、こちらとしても、転職に向けた具体的なアドバイスができる。
だが、話半ばで少しずつもやもやとする違和感を感じるようになった。
「住宅補助」「見做し残業」「給与」「事業の透明性」「倒産」
会話の中に度々現れるこの単語たち。
堅実な金融畑を歩んできた人らしい冷静な疑問や不安が、会話の片鱗として言葉に散りばめられる。
そして、通話の最後の一言でその違和感がはっきりした。
「お前もちょっと調べてみてよ。時間ある時でいいからさ」
詰まるところ、この先輩は自分の判断を自分で下すことをビビっているのである。
直感だが、僕はこの先輩はベンチャー企業に向いていないと思った。
なぜなら、ベンチャー企業で働くことの意義をほんとうの意味で理解していないからだ。
まず、安定的な売上と利益が確保できる大企業や老舗企業と異なり、ベンチャー企業は景気の波を受けやすく明日潰れるかも知れない。
そんな企業に住宅補助を求めるのは論外だし、倒産は怖いと言うことはお門違いである。
住宅補助などなくとも、給与交渉の際に住宅費を含んだ年収・給与を交渉すればいいだけの話である。
そもそも、そんなこと僕に聞く必要はない。
Googleで検索すれば、大抵のベンチャー企業で家賃補助が出ないことくらいわかるはずだ。
この点からも、自力で仮設を立てて検証する力が薄いなと感じてしまう。
そして、自分が転職する企業のことくらい自分で調べるべきだろう、とシンプルに思う。
現状、僕が与えられるものは提供した。
意を決して自分の折り合いをつけることができるのは、先輩自身だ。
ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん
明日も更新するから、待っててちょ。
Adios.